就農準備校参加
就農準備校への参加はその後平成10年の夏からになります。希望講座は小川・専門コース/有機農業だったのですが、ガイダンスでの就農準備校窓口ではまずは入門コースで鍬の握り方くらいは知ってから・・・と内原・入門コースを進められたので7月〜9月の夏のコースをまず受講し、小川・専門コースは9月〜1月の秋冬コースに移行することに決めました。詳細は同サイトに任せますが、体験した私の率直な感想をまとめて見ました。
内原・入門コース(7月〜9月)/有機野菜
内原・入門コースは日本農業実践学園(茨城県東茨城郡)で開講される実習主体の講座です。最寄り駅の常磐線内原駅は特急の止まる友部駅の一つ先。上野から特急で約1時間20分、在来線で約2時間です。この講座は2週間に一度月2回(全6回)で、一日の時間帯は基本的に11:00〜17:00です。開始時間がゆっくりなのは遠方からの参加者には都合が良いのですが、今回受講した夏期コースでは日差しが強くなり、いよいよ暑さが増す時間帯から野外作業が始るのでとても厳しいものになります。ただなるべく暑さを避けるため日中に有機農業の基礎について座学が組み込まれたりします。
作業は炎天下での圃場の除草に追われるという印象が強かったです。勿論内容はそれだけでなく定植、ボカシ作り、トマト芽かき等一般的な夏期の農作業です。が、何と言ってもこの時期2週間に一度の講座では圃場は瞬く間に草だらけになります。しんどかったです。
ポイントの一つは経験豊富な先生方と手を動かしながらゆっくり話が出来るということだと思います。農業一般の話から海外での援助活動など農業関係の様々な話を聞くことが出来ます。作業中にしつこく伺うと良いと思います。
もう一つのポイントは他の受講生の皆さんと情報交換が出来たことでした。私の場合はこの講座が実質初めての就農活動になったので特にですが、活動初期に必要な他の講座の様子や農家見学の経験など求めていた生きた情報が得られました。最近の傾向で応募者は多く定員50名一杯になるほどで多様な参加者がおり、なにより同じ考えや境遇の人たちの集まりなので自分の考えを再確認する意味でも有益でした。
入門講座受講の考え方は様々です。やはり理想的には春、夏、秋と順番に年間を通じて受講することでしょう。内容の把握は勿論ですが、体力的にも徐々に順応してゆきます。この農作業はひとえに肉体労働が全てなのでこの点は結構重要です。研修期間中に無理して身体を壊しては何をやってるかわかりませんからね。会社通勤しながらの人は特にそちらにも影響が出てしまうとさらに就農活動がしづらくなります。結果的に私の場合入門編としてはぴったりだったと感じています。しかし、実際に就農するにはまだまだ足りないという印象がありました。
身体や仕事の具合と相談しながら少しずつさらにステップアップするため、次の小川・専門コースを受講しました。
小川・専門コースも日本農業実践学園(茨城県東茨城郡)が窓口ですが、埼玉県比企郡小川町で開講される実習主体の講座です。最寄り駅の東武東上線小川町(おがわまち)駅は、池袋から急行で約1時間15分です。この講座は入門講座と同様に2週間に一度月2回(全10回)で、一日の時間帯は基本的に11:00〜17:00です。ただし開始時間は受け入れ農家が了承して頂ければ10:00からなど融通を利かせることが出来るようです。
具体的にその土地でのその農家ならではの農法、生活スタイル等を実作業を通じて経験できることがこの講座での特徴です。受講者は20名程度で3班に班分けされ、3軒の専業有機農家を各3回の講座づつ順番に回ってゆきます。
ポイントの一つは全国でも有数の有機農家が受け入れてくれていることです。小川町は新規就農でしかも有機農業家が集まっている有機農業のメッカのようなところです。30年の実績の有機農家と15年以上の実績を持つさらに2軒の新規就農有機農家の現場の勉強が出来ます。
もう一つのポイントはその農家で住み込みや通いで研修を行っている研修生と一緒に作業をするので、さらにステップアップしたい人は彼らの生の情報も得られます。
またバイオガスやガラス温室などの自然エネルギーなど農的くらしに関連の深い様々なことも勉強できる可能性があります。これは小川町そのものが農業だけでなく自然エネルギーや里山の見直しの取り組みを新規就農した有機農家や住民が主体で行政と協力して取り組んでいるためです。最後の懇親会でそれら様々な先人達と会うことが出来るので、積極的な情報交換をお薦めします。
この専門講座でも即就農したいという人にはやはり物足りない内容かもしれません。やはり受け入れ農家が事前準備を整え、作業を体験させていただくというスタンスは変わらないからです。しかし私の場合、サラリーマン時代出張と残業の多い仕事をしながら、現場の情報を収集するという点でとても充実しており、入門からのステップアップを感じることが出来ました。是非同じような境遇にある方にはお薦めできます。
私の場合最終的には農家で研修することを模索していたので、この講座で各農家の様子をじっくり見ることが出来たのでとても有益でした。このことが今の農家研修へのステップアップの決め手になりました。
もう一つのブラックボックス、農場経営についてこのころから興味が湧いてきました。農作業の厳しさを体感し、日々のスーパーなどでの販売されてる野菜にも目を向けるようになり、対する有機野菜の独特な販売方法など様々なことをすこしずつ勉強してきましたが、はて現実問題経営が自分にできるのだろうかとこのごろから疑問に思い始めました。企業経験とはまた異なる、農業独特のコスト感覚や実務的なことなど経営について知らなくてはならないのではとの思いに至ったのです。実践農家で勉強と言っても経営の実状については、そこまで踏み込むことは出来ませんでしたので、時期はダブるのですが駿河台・特別コース/農業経営も受講することにしました。
駿河台・特別コース(10月〜11月)/農業経営
駿河台・特別コース/農業経営は(社)全国農村青年教育振興会[就農準備校本部]が窓口で、都内中央大学駿河台記念館で開講される座学講座です。最寄り駅は各線お茶の水駅です。この講座1週間2回(毎週火曜日、金曜日)で全11回で、一日の時間帯は基本的に18:30〜21:00です。私は会社で営業開発を担当していたので、出張・残業が多かったのですがなんとか調整して受講しました。
この講座では経営概論、支援制度、金融、農産物流通、農地取得など概論から簿記の事務的な内容まで広く勉強できました。講師は当時は大学の先生、千葉、埼玉の専門技術委員がそれぞれの項目を担当されました。講座のイメージとしては農業の専門的な内容以外は、企業経験による事務的内容の拡張といった感じで理解吸収できました。しかしながら残念な印象もあります。具体的には、
現農政の農家の選択的拡大とゼロから立ち上げる受講生新規就農のギャップの矛盾です。講座序論の現在の農政の概論で輸入農産物へのコスト競争のため大規模化と機械化が依然進められていることが紹介され、このため新規就農には数千万円以上の資金が一般的に必要になり新規就農は難しいと、講座の根幹を揺るがすような説明が前提としてなされたことにあります。さらに各項目でも新規就農への良い話がなされるのですが、最後に講師が新規者の成功例は極めて稀であるとまとめられることもあり、新規就農講座でありながら新規就農は実質不可能であるとことさらに言われた印象がありました。私も「なんのための新規就農講座か?では本当はどうすれば就農できるのか?」を質問をして回答が得られないことに残念な思いをしました。
現実の厳しさを教授いただきその上で新規者に必要な努力や工夫の術を教えていただきたかったと思いました。それが資金をなるべく多く準備するや、達成不可能な営農計画を立てるなどでは誰も一歩も踏み出せないし出さないでしょう。それに極当たり前のことですが資金を多く準備することは、すればするほど失敗のリスクを大きくすることにつながることは常識ですから。新規就農者は未熟者ですからさらにリスクは拡大すると思います。
また、有機農業に限っての経営は全く情報は得られなかったことがもう一つの残念な印象です。質問を投げ掛けてもまったく相手にされませんでした。このころから普及センターや技術員の方など、とにかく一般的には有機農業は認知されていないということがわかってきました。
とは言えこの講習内容のギャップは実ははっきりとしたポイントがあると思います。この矛盾はどのような就農生活を想定しているかが鍵になると思います。つまり簡単なことで、サラリーマン転身新規就農者対象なので現在の年収をそのままに初年もしくは短年で確保するという、所得レベル維持の考えに立脚して構成されているためだと思います。したがって、初めから膨大な準備を要するといったような講習内容になってしまっていると思います。この考えは主催側、受講側ともにある、一般的には無理もない当たり前の考えだと思います。これを認識すると、資金力の無い若年で有機農業を求め生活そのものを変えていこうとしているものとしては、あらためてこの講座の受講意味を素直に理解できます。
一般的な農業の周辺状況を知ることには役立ったと思います。これを踏まえると、広く浅く全般を眺め必要な項目を見つけ出し、それについて必要なレベルを設定し独学で深めるということにつながる講座といった印象になりました。実際この講習が無ければ一般的な話として農業経営に何を考える必要があるのか全く知らなかったのですから。就農準備校講座は会社を続けながら情報を得たい方々にはとても有益だと思いました。また、当時会社を飛び出す勇気の無いぐずぐずした私のような人間には、結果的にはとてもあった企画だと今では思います。このような講座を受けながら、さらに具体的な有機農業の可能性と実際の先人達に接して農的生活とはなにかを知るために、様々な有機農家を訪ね見学しお話を伺うことにしたのです。蛇足ですが、見学にはやはり準備校で知りあった同じサラリーマンの先輩達と訪ねることもありました。こういった仲間と訪問することも客観性を得るために良いと思いました。
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